同一労働同一賃金で派遣社員はどうなった?派遣切りは増える?

今回は同一労働同一賃金と派遣社員について取り上げてみたいと思います。

派遣社員を初め、以前より問題となっていた非正規社員と正規社員の格差の問題。

現在でも非正規社員の数は2000万人を超えており、今後もその数が増えていくと賃金格差の問題は増々大きくなる恐れもあります。

このような状況を鑑みて、2020年4月(大企業の場合)より「同一労働同一賃金」が導入されました。

大手企業を初めとして、この同一労働同一賃金に向けて各社が準備をしてきているようですが、派遣社員の立場からすると「格差は解消されていない」と感じている人も多いようです。

今回は労働者側の立場から、この同一労働同一賃金と派遣社員というテーマを取り上げてみます。

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同一労働同一賃金とは?派遣社員への影響は?

同一労働同一賃金が始まってもうすぐ一年が経過しようとしています。

この制度がどのくらいの認知度があるのか、当サイトでは派遣社員の方々にアンケートを実施しました。

※「同一労働同一賃金による派遣社員へのアンケート調査」2021年2月実施

制度が始まってしばらく経過したこともあり、8割弱の方が同一労働同一賃金について知っているという結果になりました。

 

同一労働同一賃金とは、同じ職場で同じ仕事をする正規社員(正社員)と非正規社員(派遣・パートなど)の賃金格差や待遇の差をなくすための制度です。

現在、正社員の平均年収は504万円程度・非正規社員の平均年収は179万円程度(平成30年分民間給与実態統計調査結果より)と言われており、正規と非正規で待遇に大幅な待遇差が生じている事が分かります。

また給与や賞与などの待遇面だけでなく、福利厚生制度などにおいても大きな格差がありました。

同一労働同一賃金は海外においては既に導入している国も多く、欧州諸国などと比較しても日本は賃金格差が大きいことが問題視されている事もありました。

 

また近年では年功序列終身雇用制度も崩壊しつつあり、人材の確保に苦労している企業が多くなってきました。

少子高齢化が進む日本においては今後の労働者の減少が避けられず、人の働き方も多様化している事から今後は増々非正規社員が増える可能性もあります。

また以前とは異なり、仕事の条件や責任の重さが同じなのに、正社員だけが良い評価を受けていたり良い待遇をもらっているというケースも目立ってきています。

そのため「雇用形態や性別などに関係なく、同一の仕事をする人に対しては同一の賃金が支払われるべき」という考え方を元に不合理な格差を解消し、誰もが働きやすい社会にするために働き方改革の一環として、この同一労働同一賃金制度に取り組むことになりました。

 

同一労働同一賃金と言うと賃金額(給与)が注目されがちですが、その対象は給与だけに留まりません。

賞与や通勤手当・退職金など、正社員と非正規社員の両方に支給されているものは多くが対象になります。

また同一労働同一賃金という制度は企業側が取り組む問題と考えられがちですが、正社員との不公平感を感じることが多い派遣社員自身にとっても決して他人事ではなく、労働者にとって大きな影響を与える問題として捉えていく必要があります

 

派遣の同一労働同一賃金の仕組みは?

この同一労働同一賃金は、派遣会社が中心となって制度を実現をしていきます。

つまり主に派遣会社が派遣社員の賃金などの待遇を検討していく事になり、その待遇を決めるための方式は以下の2つになります。

 

派遣先均等・均衡方式

派遣先均等・均衡方式は派遣先企業の正社員の待遇に合わせて待遇を決めていく方式です。

派遣先の正社員との均等・均衡を図って待遇を決めることから、このような名称となっています。

派遣先の正社員と同じ仕事をしているのであれば派遣社員にも同等の待遇が求められる事になりますし、違いがあるのであればその違いを合理的に説明できることが求められます。

 

労使協定方式

労使協定方式とは、派遣会社と派遣社員の過半数で組織する労働組合との協定によって賃金などの待遇を決めていく方式です。

派遣先均等・均衡方式のように派遣先の正社員に待遇を合わせるのではなく、厚生労働省が職種ごとに定める「一般労働者の賃金水準」以上を支給することを定めるように労使協定を締結し対応をしていく方式となっています。

 

以上のように同一労働同一賃金によって待遇を決める方式は2つありますが、実際には後者の「労使協定方式」を採用する派遣会社が大半を占めると考えられます。

本来は派遣先均等・均衡方式を採用することが原則であるものの、この方式は派遣先企業が自社の社員の待遇や賃金等の情報を派遣会社に対して提供する必要があり、派遣先企業から嫌がられる恐れがあります。

 

また派遣先均等・均衡方式の場合には、派遣社員の就業先が変われば賃金額が変わってしまうケースも考えられる為、やはり派遣会社と派遣社員の間で待遇を決定できる労使協定方式を採用する派遣会社が多いと思われます。

派遣社員の方々にとっても自分の待遇に影響する問題ですので、同一労働同一賃金の仕組みをしっかりと理解しておきましょう。

 

派遣の同一労働同一賃金はいつから?

同一労働同一賃金が始まったのはいつからなのでしょうか。

この同一労働同一賃金は大企業は2020年4月から開始され、既に取り組みが始まっています。

中小企業においての適用は、制度整備のための猶予期間が設けられる為、1年後の2021年の4月1日からの開始となっています。

 

派遣社員という雇用形態の場合は労働者派遣法での適用となるため、会社の規模に関わらず2020年4月1日から施行されています。

同一労働同一賃金が開始されてから既に1年近くが経過しようとしています。

この制度の影響によって派遣社員の働き方がどのように変わっていくのか、これからじっくりと見ていきましょう。

 

同一労働同一賃金のメリット・デメリット

同一労働同一賃金により、派遣社員にとってはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

以下に挙げてみます。

 

派遣社員へのメリット
待遇の見直し

同一労働同一賃金によって、様々な待遇差の見直しが入るケースがあります。

賃金だけでなく交通費や福利厚生など、正社員との格差が解消されていく可能性があります。

 

能力向上・スキルアップ

同一労働同一賃金によって、派遣社員のような非正規も正社員と同等の教育訓練を受けれるようになる事が期待されます。

その結果として、労働者の能力向上やスキルアップに繋がる可能性があります。

 

モチベーションアップ

これまで正社員と同じ仕事をしているにも関わらず、待遇差がある事によって不満を抱えている派遣社員も多くいました。

同一労働同一賃金によって格差が解消され正当な評価を受けられるようになれば、派遣社員自身も高いモチベーションを保ちながら仕事に臨むことが出来ます。

 

雇用が増える

非正規が正社員と同等の待遇を得ることが出来るようになれば、求人の選択肢が広がり非正規雇用の職も検討しやすくなります。

そのため派遣社員にとっても仕事の幅が広がる事になり、雇用の機会が増えることが期待されます。

 

派遣社員へのデメリット
評価が厳しくなる

同一労働同一賃金が派遣社員にもたらす影響はメリットばかりとは限りません。

例えば派遣社員が正社員と同等の待遇になった場合、それに応じて求められる成果や評価基準も厳しくなるケースも考えられます。

 

人件費が上がる

企業側からすれば、同一労働同一賃金によって非正規にも同じ待遇を支払う場合、当然に人件費が高騰する可能性があります。

人件費が増えてしまうのであれば、次回の契約更新をしない方向で考える企業も出てくるかもしれません。

 

派遣切りの可能性

人件費が上がった結果として、不合理な解雇や派遣切りが発生してしまうケースも考えられます。

正社員を守るために、派遣などの非正規から解雇を進めてくる可能性もありますし、今後は非正規の雇用を控えるといった企業が出てくる可能性もあります。

同一労働同一賃金によって非正規の雇用が増えるどころか、逆に求人が減ってしまう可能性もゼロとは言えません。

 

同一労働同一賃金ではメリットが強調されていますが、労働者のメリットが増えるという事は裏を返せば企業側の負担が増えることにもなり兼ねません。

労働者としてもメリットだけに捉われず、周囲の動向を見ながら今後の働き方を見極めていく必要があります。

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同一労働同一賃金による派遣の時給(給料)は?

同一労働同一賃金によって、派遣社員の給料はどうなるのでしょうか。

多くの派遣会社が「労使協定方式」を選択していると思われますが、この方式の場合には以下の計算式によって算出されます。

 

「職種別の基準値」×「能力・経験調整指数」×「地域指数」

  • 「職種別の基準値」は、厚生労働省が定める職種毎の賃金のこと(職種別の賃金を賞与込みで時給換算したもの)
  • 「能力・経験調整指数」は能力や経験を数値化したもの
  • 「地域指数」は都道府県・市区町村ごとに割り振られた指数

 

「職種別の基準値」については通達の中で職種毎に一覧表になっているので、該当する基準値を選びます。

次に「能力・経験調整指数」を掛けますが、この年数は必ずしも実際の勤務年数とは限らず、あくまで目安になる事に注意が必要です。
(例:勤続年数5年の派遣社員の場合であっても、必ずしも5年の指数を用いる訳ではなく、実際の業務内容や難易度などと照らし合わせて指数を決めるという事)

最後に「地域指数」ですが、この指数では「都道府県別」と「ハローワーク別」の2つが示されており、派遣労働者の就業場所に応じて選択をします。

このように指標・指数によって派遣労働者の賃金が決まりますが、賃金やコストを低くするためにあえて低い指数を用いるなど、派遣労働者の賃金の引き下げを目的とした調整は認められませんので注意が必要です。

 

ところで同一労働同一賃金によって、実際に現場で働く派遣社員の時給への変化はあったのでしょうか。

実際に時給が上がったかどうか、アンケート結果が以下になります。

※2021年2月アンケート実施

時給が上がったという方は全体の1割強という結果になりました。

時給額としても50円~200円程度上がった方・中には300円以上時給が上がった方もいるなど結果も様々。

一方で派遣社員の中には「同一労働同一賃金が始まっても全く待遇に変化がない」という不満の声もあるようです。

 

同一労働同一賃金による派遣の退職金は?

同一労働同一賃金においては、派遣社員にも退職金が支給されることになっています。

退職金の支給方法は、以下の3つの方式から選択をします。

  1. 一般的な退職金制度によるもの
  2. 時給に上乗せするもの
  3. 中小企業退職金共済制度への加入

実際には退職金制度がない派遣会社もありますし、正社員にさえ退職金を支給していない会社も多いですが、そのような会社であっても派遣労働者に対して退職金の支給しなければならないケースも出てくるでしょう。

ただし厚生労働省のマニュアルでは、「勤続3年以上の派遣労働者」としている事から、制度開始の2020年4月から3年が経過した派遣労働者が退職金支給の対象となると思われます。

 

同一労働同一賃金によって、実際に働く派遣社員に対して退職金について説明はあったのでしょうか。

以下がアンケート結果になります。

※2021年2月アンケート実施

調査の結果、ほぼ8割の方には会社から退職金について説明はなかったようです。

会社側からするとまだ先の事と捉えている部分もあるのかもしれませんが、退職金についてどのような支給方法になっているのか、気になる方は確認してみても良いのかもしれません。

 

同一労働同一賃金による派遣の交通費は?

今まで派遣社員に対しては「時給の中に交通費が含まれている」として、交通費が支給されないケースが多かったかと思います。

ですが2020年4月以降は、派遣社員にも交通費が支給されるようになります。

 

交通費は次のいずれかの方式によって支給されます。

  1. 実費を支給する
  2. 時給に72円を上乗せする

交通費は実費でそのまま支払うか、72円以上の金額を時給で支払うかのいずれかの方法になります。

※72円というのは現在の一般通勤手当の額を時給換算した金額です。

 

例:所定労働時間が8時間・週5日勤務の場合

72円×8h×5日×52週÷12ヶ月=12,480円

=12,480円もしくは、12,480円以上の実際にかかった交通費が毎月支給される

派遣会社によって上限が決まっている場合もあるので、詳細は派遣会社に問い合わせをしてみましょう。

 

交通費についても、派遣社員の方々にアンケートを実施しました。

※2021年2月アンケート実施

同一労働同一賃金によって、半数以上の方に交通費が支給されるようになったとの回答が得られました。

中には時給が下がってしまったという方もいるようですが、今まで交通費が支給されていなかった派遣社員にとって格差解消への一歩と言えるのかもしれませんね。

 

同一労働同一賃金で派遣切りは起こる?

 

同一労働同一賃金によって、労働環境改善や待遇の見直しへの期待の声が上がっています。

ですが一方では、「同一労働同一賃金によって派遣切りが起こりやすくなるのでは?」という不安の声も上がっているようです。

まして昨年からはコロナウイルスの影響により非正規の解雇者が増加し、もしこの制度によって派遣切りが増えることになれば、派遣労働者の雇用が大きく失われてしまいます。

「派遣切り」という言葉は主にリーマンショックの頃から聞かれるようになった言葉ですが、あの頃にも派遣労働者の契約打ち切りが大きな社会問題となりました。

 

確かに現在のような経済状況の中では体力のない企業は多く存在し、給与を上げる余力のない企業は雇い止めや派遣切りを実施してくる可能性はゼロとは言えません。

企業が非正規を雇う理由は「安い賃金で雇えることがメリット」という側面もあり、同一労働同一賃金によってその利点が失われる事になれば、かえって派遣切りや解雇が増えるケースもあるのかもしれません。

また同一労働同一賃金が導入されたからと言って企業側の人件費予算を簡単に増やせるとは限らず、負担が増加した分のシワ寄せが派遣社員にのしかかってくる事も十分に予想されます。

特にコロナウイルスが問題になって以降、派遣社員の中には「契約を更新してもらえない」「突然に雇い止めされた」といった不安の声も多く挙がっており、中には「社員はテレワークなのに派遣社員は出社勤務」など、改めて正規と非正規の格差が浮き彫りとなる話題も取り上げられました。

 

ですが同一労働同一賃金を始め、「能力」で評価される時代になってきている事は確かです。

終身雇用や年功序列制度は崩壊しつつあり、今後は非正規を含め個々の実力や能力で判断され、ただ座っているだけの正社員は会社にとっても大きな負担となっています。

同一労働同一賃金によって正規と非正規の垣根がなくなり、派遣社員を始めとした非正規が本来の力で評価される時代は近づいているような気がします。

格差解消のための同一労働同一賃金制度が逆に派遣切りを加速させることのないよう、派遣会社を始めとした企業側の慎重な舵取りが求められます。

 

まとめ

派遣と同一労働同一賃金について幾つか挙げてみました。

同一労働同一賃金が始まったことにより、企業側としては正社員と非正規の仕事内容を明確にしたり、今までの労働環境の見直しなどが迫られてくるかと思います。

一方で派遣社員自身としてもメリットばかりではなく、今まで以上に相応のスキルや成果が求められるケースが多くなってくるでしょう。

この新しい同一労働同一賃金という働き方改革を転機として、将来に向けた自分の成長の機会に繋げてみるのも良いかもしれませんね。

今回は派遣社員と同一労働同一賃金について取り上げてみました。

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