派遣先がM&Aで合併された時はどうなる?
派遣先がM&Aで合併された時はどうなる?
今回は派遣先が合併された時のケースについて挙げてみたいと思います。
M&Aという言葉を聞いたことがある人も多いかと思いますが、企業の合併・買収のことを
指しています。買収・合併は日本国内でも増えており、派遣スタッフとして働く人の中にも
就業途中に会社側が合併したという経験を持つ人もいるのではないでしょうか。もし就業先で
ある派遣先企業が他社に吸収合併された場合、派遣スタッフはどうなるのか不安を持つ人も
いるでしょう。今回はそんな派遣先の合併に触れてみます。
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M&Aにより増える合併・買収
年々企業間の合併・買収案件は増えていると言います。理由としては様々ではありますが、産業構造の
変化や企業のグローバル化が進む中で、株式交換制度の創設や民事再生法の施行などM&Aに関連する
法整備が整ってきた事も案件増加の理由の1つとして挙げられます。また買い手側には基本的には
買収資金も必要なく合併による企業規模の拡大や節税メリット等諸々の利点がある事を考えれば、
やはり買収・合併を進めたいという企業も多いのでしょう。
この合併増加の流れにおいては派遣事業者においても同様であり、特に今までなんとか経営を継続してきた
特定派遣事業者も前回の派遣法改正により財産基準を満たす必要が生じ、また今後は教育訓練義務など今まで
以上のコストがかさむ事が予想される事から、合併という手段によりこの緊急事態を回避しようとする
事業者も多くなってくるのかもしれません。また一般企業でも人手不足により既存のアルバイト・パート
スタッフを正社員として囲い込み雇用をし始める等、雇用環境にも大きな変化が見られる中で、
派遣スタッフを充足出来ないという中小零細の派遣事業者も増えてくる事が予想され、今後も増々難しい
舵取りを迫られるものと思われます。
派遣先が合併したら派遣スタッフはどうなる?
このように企業間での買収・合併が続く中では、派遣スタッフが働く派遣先が他社に合併されるという
機会に遭遇する事もあるでしょう。もし就業する会社が合併した場合、今までの雇用はどうなるのでしょうか。
これは派遣社員に限らずではありますが、吸収合併されたとしても今までの条件が引き継がれるのが通常です。
合併の場合にしても従前の会社と労働者間の契約はそのまま新しい会社に継承されます。この事は派遣契約に
おいても同様と考えて良いでしょう。合併には合併により新しい会社を設立する「新設合併」と、一方が存続
し他方が消滅する「吸収合併」がありますが、どちらにしても合併前と同様の条件で新しい会社が全ての権利
義務を承継するというのが原則的な考え方になります。そのため派遣社員という雇用形態は元より、時給等の
待遇面も基本的には今までの契約と同様に存続される事になります。またそもそも合併により派遣先が変わ
ろうとも、雇用主は派遣会社である事から、派遣会社はスタッフに対して今までとほぼ変わりのない条件で
仕事を確保する責任がありますし、逆にスタッフとしても大きな条件の変更がなければ、契約期間中は
きちんと労働を提供する義務もあります。
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また派遣特有の問題として今までの抵触日や事業所単位・個人単位の期間制限が合併後はどうなるか
という問題もありますが、合併後においても従前の抵触日が引き継がれ、事業所単位の期間制限もそのまま
統合先に引き継がれる事になり、また個人単位の期間制限についても組織構成、業務内容及び指揮命令系統に
いずれも変更がない場合は、統合等の前の抵触日がそのまま引き継がれる事になると考えて良いかと思われます。
つまりは基本的には今までの契約は引き継がれるというのが前提ではありますが、実際のケースとしては
新しい会社が既存の社員等と労働条件を統一したいという意向や、吸収合併前に身軽になっておきたいという
会社側の意向が出てくるケースもあり、中には権利濫用とも取れる人員整理・リストラなどが行われる可能性も
あります。しかし合併による余剰人員が生じるケースでも合理的理由や人員削減の必要性がなければ
派遣社員でも簡単に解雇できるとは思えません。不利な条件にならないよう、きちんと合併後の条件等に
ついて派遣会社側と話し合っておきたいですね。
合併後の不平等・不均衡
しかし基本的には合併後もいくら従前の条件と同様とは言っても、派遣先である就業場所が変わる限りは
今までと同じように働けるとは考えにくいというのがリアルな所かと思います。勤務先場所が変われば
スタッフによっては通勤時間が大幅に変わる事もあるでしょうし、新会社に移った後は今まで担当して
いた仕事と全く同じ仕事が出来るとも限りません。また派遣先の指揮命令者や上司も変わりますし、
仕事の仕方や会社の体質も変わってくるでしょう。また環境以前の問題として、吸収した会社側の
社員と吸収された側の社員とではその関わり方にも歪みや不公平感が生じる可能性があります。
例えば吸収された側の社員はその新会社の社員に気を遣わなければならないケースもあるかもしれませんし、
当面の間はどこか遠慮がちで仕事を進めなければならない場合も出てくるかもしれません。また仕事の
やり方に関しても今までのやり方ではなく新会社のやり方で業務をこなす必要も出てくるでしょう。
他にも上下関係や休憩の取り方・コミュニケーション量や仕事へのモチベーション等、会社が変わると
いう事は今までいた会社の文化を一度捨てて、新しい会社の文化を一から吸収していく難しさもあり、
合併がなされる以上はこの辺の不均衡や不平等がつきまとう事は避けられない部分もあり、この点は
正社員でも派遣社員でも同様かと思います。新会社に移ったとしても、どれだけその仕事に情熱を注いで
いられるか・どれだけ謙虚に移転先での新しい文化を取り入れられるか・合併も自分の経験・キャリアの1つ
として捉え、積極的に仕事に取り組めるか等、冷静に考えて物事を判断していきたいものですね。
合併と言うとよく吸収された側の虚しさがクローズアップされがちなものですが、意外と吸収した会社側
としても新しい事に戸惑っている事も多いものです。合併後の立場云々は抜きにして、お互いを配慮できる
職場環境を作っていく事が求められますね。
今回は「派遣先が合併された時、派遣社員はどうなる?」について挙げてみました。
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