派遣社員が過労死自殺。責任の所在は派遣先?派遣元?

派遣社員が過労死自殺。責任の所在は派遣先?派遣元?

 

今回は派遣社員の過労死自殺について挙げてみたいと思います。

過労死とは長時間の残業や休日が無い激務を強いられた結果、精神的・肉体的負担で、

労働者が突然死することや、過労が原因で自殺することを指します。

最近でも派遣社員ではありませんが大手広告代理店の社員が過労死で自殺した事や、過去にも

光学機器大手の派遣社員として勤務していた女性がうつ病を理由に自殺した事がニュースと

なりました。一般的な派遣先現場では労基法を始め一定のルールを元に適正に勤務させている事が

殆どかとは思いますが、長時間勤務を強いられる事や社員の中で板挟みとなるケースもある派遣

社員にとっては深刻な問題として捉えておかなければなりません。

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安全配慮義務とは

派遣先や派遣会社としては派遣スタッフが仕事中に病気や怪我をしないように日頃から

安全な職場環境を整備しておく事が必要になります。このように安全な職場環境を整備する義務

の事を安全配慮義務と言い、この義務は派遣先だけではなく派遣会社も負う事になっています。

例えば過去に安全配慮義務違反が問われた裁判例としてアテスト事件があります。これはニコンの

熊谷工場に派遣された男性がうつ病を発症して自殺したとして、遺族が派遣会社ニコンと業務請負会社

ネクスター(現アテスト)に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は両社に計約2480万円の支払いを

命じ、派遣先と派遣会社双方に安全配慮義務違反を認めています。

このように安全配慮義務違反から生じた事故・自殺等のケースでは労災ではカバーし切れない程の

高額な損害賠償請求がなされる場合もあり、派遣先・派遣会社共に大きな責任・義務が課せられています。

今でも派遣を行う上では派遣先と派遣元双方に安全衛生に関する責任者を置き、連携を取りながら

スタッフの安全を確保する義務があり、就業条件明示書等にも責任者名を記載する事になっています。

また契約時だけではなくスタッフへの安全衛生教育や所定の労働時間を超えた場合の医師の診断など

のケアが本来は必要ではありますが、全ての派遣先や派遣元が遵守出来ているとは言えず、今後の

派遣社員の増加に伴い、各社の対応が求められていると言えます。

過労死自殺は派遣先・派遣元の双方が責任を負う

以上の安全配慮義務の観点からすれば、万一派遣先で就業しているスタッフが過労死自殺を

したとすると、派遣先だけではなく派遣元も責任を負う事になると考えられ、双方が責任を負う

事になります。派遣先は派遣スタッフが長時間労働や深夜労働に出来るだけならないように

業務量を調整する等の配慮が必要になる事はもちろんの事、普段からスタッフの健康状態や

言動に注意して管理をしておく必要があると言えます。また確かに過労死自殺等の事故は派遣先

の労働環境から起因して起こるケースが多く考えられますが、派遣先だけではなく派遣会社としても

決して責任を逃れる事は出来ません。派遣会社はスタッフを勤務させるにあたり、その会社を選んで

派遣しているという責任もあります。また派遣会社が雇用主である以上、管理者としての責任も

免れる事は出来ないでしょう。このような過労死等の事故を起こさない為にも普段からスタッフの

職場環境や健康状態に目を光らせておくと共に、事故が起こる前兆があった場合には派遣先と

派遣元が早急に連携して対応を取っていく姿勢が求められます。また派遣先や派遣元が適切な対応を

取ってくれない等の場合には、スタッフ自身が臆せずに声をあげていく事も必要と言えるでしょう。

今回は派遣での過労死問題・安全配慮義務について挙げてみました。

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