派遣でフレックスタイム制を適用するには?

派遣でフレックスタイム制を適用するには?

今回は派遣社員のフレックスタイム制の導入について挙げてみたいと思います。

派遣社員を含め、サラリーマンとして日々働いていると、朝の出勤がつらくなったり

時には遅刻しそうになったりといったケースは誰にでもあるかと思います。

もし仕事の始業時間や終業時間を自分で自由に決める事ができたら、、と考えた事がある

人もいるのではないでしょうか。今回はそんな派遣社員とフレックスタイム制について

触れてみます。

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フレックスタイム制とは?

フレックスタイム制とは労働者が始業時間や終業時間を原則として自由に決められる制度

です。一般的な派遣社員さんであれば9時~18時とか8時~17時などの決められた時間

で勤務している事が多いかと思いますが、その出勤時間や退社時間をある程度自分で自由に

決められるという制度になります。

もう少し細かく言うと、フレックスタイム制の場合にはまず1か月以内の一定期間の

総労働時間」を定めておき、その時間の範囲内で出社時間と退社時間を自由に決められる

という事になります。総労働時間は以下の式で求められます。

総労働時間=清算期間の日数÷7×法定労働時間(週平均40時間・特例措置事業は44時間)

、、と言っても何だか言葉だけでは分かりずらいですね。

 

例えば一定の期間(清算期間)を1か月とし、その月の日数が31日だとします。

そうするとこの場合の総労働時間は31日÷7×40=177.1時間となります。

この177.1時間が総労働時間の上限という事になります。

労働者の実際の勤務時間がこの総労働時間に足りない場合には、会社は不足分を給与から

減額する事もでき、これは翌月分に繰り越す事もできます。

また逆に総労働時間を超えた分に関しては、その超過時間分は時間外労働として時間外手当

として清算する事になります。なお時間外手当は翌月分に調整する事はできません。

コアタイムとフレキシブルタイム

またフレックスタイム制のモデルを考えた場合には、コアタイムとフレキシブルタイムに

ついての設定も検討する必要があります。

コアタイム:必ず労働しなければならない時間帯

フレキシブルタイム:自由に出勤・退社できる時間帯

となっています。例えばコアタイムが10時~12時・13時~15時に定められて

いたらその時間帯は必ず働かなければなりませんし、午後の15時~19時がフレキシブル

タイムとして定められていたらその時間内はいつ退社してもOKという事になります。

またコアタイムは必ずしも定めなければならないという訳ではなく、設定は自由です。

派遣でフレックスタイム制を適用するには?

派遣現場にてフレックスタイム制を導入するには派遣会社での手続きが必要となり

主には以下の4つの手続きが必要です。

①派遣スタッフがフレックスタイム制で勤務する事を就業規則にて定める

②労使協定にて清算期間や総労働時間・労働者の範囲など詳細を定める

③派遣会社・派遣先間の派遣契約書においてその旨を記載

④派遣スタッフとの契約書(就業条件明示書等)においてもその旨を記載

フレックスタイム制にするメリット・デメリットは?

会社がフレックスタイム制を導入するメリット・デメリットとしてはどのような点が挙げられるでしょうか。

メリット

・労働者が勤務時間を自由に設定できる。またその結果、生活上のスケジュールを柔軟に組んだり、

通勤ラッシュを避けるといった事も可能。

・労働者自身が仕事の時間配分を決めていく事で、仕事の効率が上がったり、残業時間を短縮

できるといった事が期待できる。

・労働者の働き方を配慮した制度として、従業員の長期的な定着・人材確保が期待できる。

・派遣スタッフ等、女性従業員が多い職場では、子供の送り迎えや介護・習い事・買い物時間など

生活スタイルに合わせた時間を確保しやすい。

・企業のイメージUP

フレックスタイム制に関わらず、育児や出産・有給や労働時間など、新しい取り組みや

労働者に配慮した制度を設ける会社はメディア等を通じてイメージアップに繋がる可能性もあります。

デメリット

・会社内の従業員同士での連携や取引先との対話・仕事の進捗など、特に共同作業を強いられる

分野においてはフレックスタイム制では逆に仕事効率が下がったり、進捗が悪くなる事もあります。

・自分で時間をしっかりと管理できる従業員は良いものの、中にはコアタイムとフレキシブル

タイムの線引きが曖昧になったり、時間にだらしない面が露呈してしまうケースも。

・派遣において考えると、例えば派遣先社員はフレックス制なのに、派遣スタッフは通常労働

となると、職場への不公平感や、均等待遇を求める声が強まる可能性もあります。

・派遣においてフレックスタイム制を導入するとなると、派遣スタッフの時間管理は派遣先で

行いますが、給与計算等は派遣元で行う為、労働時間の過不足の調整や計算が煩雑になってしまう

可能性があります。

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どのような会社がフレックスタイム制を導入している?

現状ではフレックスタイム制を導入している会社は少数です。また派遣スタッフが働く職場

でフレックスを適用している会社は更に少ないでしょう。フレックスタイム制を適用している

会社というのは主にどのような会社が多いのでしょうか。

・IT系企業

やはりフレックスタイム制を多く適用しているのはIT系企業が挙げられます。

プログラマやエンジニア・webデザイン等、技術職は特にその傾向があり、ある程度は仕事を

個人や技術者の裁量に任されているケースが多く、他職種と比較すると勤怠時間にバラつきが

あっても仕事に支障が生じにくい事が考えられます。また個人で完結できる仕事も多い事や、

外部との交渉事なども少ない事なども関係しているでしょう。

・営業職

主に外回りがメインの営業職にはフレックスを適用している会社があるように思います。

特に新規開拓営業など、不特定多数の顧客をターゲットにする営業形態では、勤務時間

を固定付ける理由はさほどありません。極端に言えば数字・売上さえ上げていれば

勤務時間は柔軟に見てくれるといった社風の会社もあるでしょう。

・外資系

外資系企業の中にもフレックスタイム制を導入している企業が多いかと思います。

フレックスタイム制というのは元々は欧米人の働き方を日本に取り入れたものとして

考えられているようです。また外資系企業は会社によっては実力主義の会社・成果主義

の会社も多く、勤怠については柔軟に考えられている企業も多くあります。ですがそれだけに

個人に課せられる責任や成果は厳しいものが求められるケースもあります。

 

フレックス=自由の履き違え

フレックスタイム制という言葉を聞くと、羨ましい・自分の会社もフレックス制にして

欲しいといった声を聞く事もあるかと思います。実際に会社員や就活生が希望の会社の条件を

挙げてみても、「フレックスタイム制がある会社」の条件を挙げる人もいる事でしょう。

フレックスと言うと、自由に出勤できて満員電車からも解放される・仕事も効率的に行える

といったように、メリットばかりを挙げる人もいますが、実際にはそのようにはならない

ケースもあります。むしろフレックスという制度のイメージとは逆に、労働者にとって厳しい

環境になる可能性さえもあります。

 

冷静に考えてみればフレックスにしたからと言って、自分に割り振られる仕事のボリュームが

減るという訳ではありません。特に仕事毎に担当制を敷いている会社や、納期があらかじめ決まっ

ている仕事、一定期間にやるべき仕事量が決まっている業務の場合には、フレックスにしたから

と言って、労働者の環境が改善するかと言えば、必ずしもそうとは言えないでしょう。

むしろ会社によっては、時間管理をあえて労働者側に委ねる事によって、「フレックス=自分の担当

している仕事が終わるまでは帰ってはいけない」といったように、逆に長時間労働を課したり、

通常の範囲以上の仕事を任せる手段になってしまう事さえも考えられます。

 

また共同作業等を伴う仕事などの場合、他スタッフも集まらなければ、返って自分の仕事の進捗が遅く

なるケースもあるでしょうし、他スタッフの出勤時間に合わせる為に自分の生活スタイルがチグハグに

なる事さえもあるかもしれません。または先にも挙げたように時間管理がきちんと出来ないスタッフ

が多くなってくれば職場の指揮が落ちていく事も考えられますし、給与計算など余計な事務コスト

が会社側に増えてしまうといったデメリットも考えられます。

 

またフレックスを派遣社員に置き換えて考えてみれば、派遣の場合には数か月毎に契約を繰り返す

形態であり、職場によっては月毎に新しいスタッフが入社しては、一方で別のスタッフが辞める

といったように、人員の入れ替わりが比較的激しく起こりやすい傾向もあります。

そのような環境下で勤怠が自由であるフレックスタイム制を導入すれば、指導者が固定せずに

スタッフがきちんとした指導が受けられなかったり、基本業務がきちんと身に付かないままに

本番環境で仕事をせざるを得ないといったケース・時間的に不規則な勤務対応を迫られると

いったケースも想定されます。

またフレックスの場合、新人スタッフ同士で研修時間等の調整がうまく行かないケースや、

時間帯による業務量にバラつきが生じ(例:コールセンターの受電本数など)、その結果スタッフ

の希望シフトも偏りがちになってしまうケース・時間によるすれ違いから新人スタッフが同僚・

上司といつまでも思うように職場に馴染めないといったケースも考えられ、最悪の場合には

それらが離職の原因に繋がる事もあるかもしれません。

 

もちろんフレックスタイム制にはメリットも多いですし、フレックスが成功している企業であれば

それは良い事ですが、このような変形労働時間制を採用する場合には、職場の意向だけではなく、

労働者側の意見や時間管理の難しさ・健康面の配慮などを総合的に踏まえた上で検討したいですね。

今回は派遣でフレックスタイム制を適用する場合?について挙げてみました。

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