派遣先からの引き抜きで直接雇用時にクレームが入った?

今回は派遣先から引き抜きをされ、スタッフが直接雇用への誘いを受けた場合について挙げてみたいと思います。

派遣スタッフさんの中でも特に優良なスタッフさんであれば派遣先からその仕事ぶりを認められたり高評価を受けるといった事もあるかと思います。

そのような優秀なスタッフさんは派遣先から正社員雇用の誘いを受けたり、引き抜き話を受けたといった人もいるかもしれません。

ですが派遣というのは派遣会社と派遣先・スタッフの三者で成り立つ特殊な形態です。

派遣という特殊な雇用形態の中で、このような引き抜き行為は可能なのでしょうか。

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派遣期間中に引き抜きできる?

派遣社員というのは契約で派遣期間が定められており、その期間は当然に派遣社員として就業する必要があります。

通常は3ヶ月程度の派遣期間を経て、毎回双方の合意の元で契約を更新していく形が一般的です。

そのためもし派遣期間中に派遣先会社がそのスタッフさんを自社で直接雇用したいのであれば、派遣会社側に紹介料を支払ったり、その派遣会社が職業紹介事業者の許可を受けていれば一般派遣から紹介予定派遣に切り替える等して直接雇用を検討するのが一般的な考え方になるかと思います。

 

ですが簡単に紹介予定派遣と言ってもタダではありません。

一般的には雇い入れる人の想定年収の2~3割程度の紹介料が必要になってきますので、100万前後の紹介料が必要となる事も珍しくなく、特に中小零細企業にとっては出来れば捻出したくないコストであるというのが本音ではないでしょうか。

 

それでは派遣期間中であっても派遣先が強引にそのスタッフさんを引き抜いてしまえば良いのでは?と考えてしまう人もいるかもしれませんが、派遣会社は派遣期間中であれば契約書に派遣先の「直接雇用禁止の条項」を盛り込む事ができるようになっています。

また派遣契約を途中で解除して派遣先とそのスタッフが直接雇用すれば、契約不履行により賠償請求を起こされる可能性すらあるかもしれません。

派遣期間中にどうしても直接雇用したいのであればやはり派遣会社との交渉を元に取引を進めていく必要があると言えます。

 

派遣社員の引き抜きでクレームが入った?

派遣先会社が派遣会社に黙ってスタッフを引き抜こうとすると、派遣会社からクレームが入ることも考えられます。

派遣先としては派遣会社を通すと多額の紹介料がかかりますし、引き抜きして直接雇用するにしても派遣会社ではなくスタッフ本人と直接交渉をした方が条件面も交渉しやすいので、安易にスタッフを引き抜こうとする派遣先もあります。

 

ですが派遣会社からすれば紹介料ももらえず今後の派遣料金も入らなくなる訳ですから、損失でしかありませんので防止策としてクレームを入れてくる事があります。

また派遣会社はスタッフの雇用主でもあり、派遣期間中に引き抜きをされるという事は自社の社員を他社が自分のところに入社させるのと同様の行為とも言え、派遣会社がクレームを入れてくるのは自然な事とも言えます。

 

無理な引き抜き行為により、ケースによっては違約金・紹介料を請求をされたり、その後の派遣会社からの人材供給がストップしてしまう事態も考えられます。

最悪の場合には「〇〇社は倒産する可能性がある」「○○社は評判が良くない」といった双方の言い争いなど、事態が泥沼化する可能性もあるでしょう。

このように人材の引き抜き行為というのは発覚すると大きなクレームに発展する可能性がありますので、慎重な対処が必要です。

 

派遣の引き抜きに関する法律

それでは派遣期間終了後に派遣先とその元スタッフさんが直接雇用を結ぶことはどうでしょうか。

派遣契約期間も満了している事ですし、派遣先と本人が直接雇用を結ぶことは問題がないように見えます。

しかし一方では派遣会社の契約書等の中には、派遣契約期間終了後であっても派遣先との直接雇用を禁じる旨の条項が盛り込まれているケースがあるのも事実です。

 

ですが結論としてはやはり派遣契約期間終了後であればスタッフ本人は元派遣先会社と直接雇用契約を結ぶことが出来ます。

これは労働者派遣法でも定められている事であり、派遣元会社に対し、派遣期間終了後に派遣スタッフが派遣先にて直接雇用される事を禁止する旨の契約をしてはいけないという事を定めています。

「派遣労働者に係る雇用制限の禁止」

第33条 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者又は派遣労働者として雇用しようとする労働者との間で、正当な理由がなく、その者に係る派遣先である者(派遣先であつた者を含む。次項において同じ。)又は派遣先となることとなる者に当該派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用されることを禁ずる旨の契約を締結してはならない。

二 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者に係る派遣先である者又は派遣先となろうとする者との間で、正当な理由がなく、その者が当該派遣労働者を当該派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用することを禁ずる旨の契約を締結してはならない。

 

つまり「派遣期間中」は派遣会社は派遣先に直接雇用の禁止を主張する事はできますが、「派遣期間終了後」は禁ずる事はできないという事になります。

派遣会社によっては派遣先やスタッフ本人に「派遣契約終了後でも直接雇用された場合には移籍金・賠償金が発生する」等と言う会社も少数ながらあるかもしれませんが、法的にはそれに応ずる必要はありません。

また派遣契約は既に終了している訳ですから、スタッフさんがどのような仕事に就いても誰に雇われてもそれは本人の自由であり、例え派遣会社であってもそこまで制限できる訳ではありません。

 

スタッフさんは派遣契約終了後に問題なく直接雇用を結ぶ事ができますので、今までの就業経験や派遣期間を活かして培った実力を十分に発揮していきましょう。

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派遣の引き抜きで紹介料はかかる?違約金は?

派遣社員を引き抜きする事により、紹介料や違約金は発生するのでしょうか。

結論から言えば、派遣契約終了後の引き抜きには紹介料や違約金はかかりません。

 

派遣会社が紹介料を請求できるのは「紹介予定派遣」であり、派遣期間終了後に派遣会社が派遣先に対し紹介料を請求することはスタッフの雇用を制限しているようにも取れます。

もし紹介料を強要するようであれば上記の派遣法33条にも抵触する可能性も出てくるでしょう。

上述したように派遣期間終了後は派遣スタッフは派遣会社の拘束を受ける事はありませんので、派遣先会社と雇用契約を結ぶことも自由です。

 

また派遣期間終了後にスタッフと派遣先が直接雇用をする分には、違約金が発生する事もありません。

派遣先だけでなく、もちろん派遣スタッフが違約金を負担するような事もありませんので、自分が希望する企業で自由に働くようにしたいですね。

 

派遣の引き抜きがバレる瞬間とは?

派遣先から引き抜き話を受けているスタッフさんの中には「派遣会社にはあまり知られたくない」と考えているスタッフさんもいるのかもしれません。

ですが派遣の引き抜きはバレる可能性があると言えます。

派遣で引き抜きがバレる理由としては、以下のようなケースが考えられます。

  • 派遣会社と派遣先の取引関係は続くため
  • あなたの事を知っている同僚スタッフが新たに派遣されてきた
  • 派遣会社の営業マンが派遣先に来た

 

普通に考えれば、あなたが引き抜かれた後も派遣会社と派遣先の関係は継続します(労働供給は続く)。

同僚がたまたま派遣されてくる事もあるでしょうし、外回りの知り合いの営業マンが来る可能性もあります。

そのため法的にクリアしている場合であっても、どこか後ろめたさを感じながら勤務しなければならないケースも想定されます。

 

きちんとした派遣先であれば事前に派遣会社側と話を通してくれる事もありますが、ルールを破ってこっそりと引き抜かれるような行為はお勧めしません。

引き抜きのケースであっても、入社後に安心して就業できるように話を進めておきましょう。

 

派遣が引き抜きを受けても正社員とは限らない?

派遣スタッフさんからすれば派遣先に直接雇用の引き抜きを受けた事で、今までの派遣だったのが「正社員になれる」と喜ぶ人もいるかもしれません。

ですが直接雇用とは言っても、必ずしも正社員雇用であるとは限らない点にも注意が必要です。

契約によっては契約社員・もしくはアルバイトの可能性すらありますので、どのような雇用形態での契約になるのか事前にしっかりと確認をしておく必要があります。

 

またこの手の引き抜き行為で問題になりやすいのが「口約束」のケースです。

せっかく派遣先に引き抜かれて直接雇用されたとしても、契約条件や待遇が自分の希望を下回っていたというケースも考えられますし、場合によっては派遣時代の待遇を下回る可能性すらあります。

また直接雇用が実現されればまだしも、その話を信じて派遣を辞めたのに派遣先の直接雇用の話がボツになってしまえば、スタッフさんは職を失うことにもなり兼ねません。

 

特に人材不足の企業では、短期の派遣社員などを派遣会社を通さずにこっそり引き抜こうとするケースは時々ありますし、無事に直接雇用されたとしても事前に約束していた契約条件と異なるといったケースは十分にあり得ますので、しっかりと書面等で契約を交わした上で、慎重に話を進めていく必要があります。

 

派遣社員が引き抜きされた時の志望動機は?

派遣社員の場合には、基本的には志望動機は不要とされています。

派遣会社はお仕事を紹介してくれる会社であり、スタッフさんは派遣会社で働く訳ではないので、派遣会社に対して志望動機を伝えるのは適切ではないからです。

ですが引き抜きを受けて元派遣先企業で働くことになった場合には、志望動機をどのように伝えれば良いか迷ってしまう方もいるかもしれません。

本音を言えば志望動機は「引き抜いてもらったから」という事になるのかもしれませんが、やはり自分なりにきちんと志望動機を考えておきたいものです。

 

以下は派遣社員の引き抜き時の志望動機の簡単な例文です。

私は派遣社員として御社に入社して以来3年間、プログラマとして従事して参りました。

派遣社員として与えられる業務も十分に遣り甲斐のあるものでしたが、経験を積んでいく内に御社の社員となって新たな職務に挑戦してみたい・技術者として御社でさらに成長していきたいと考えるようになりました。

そのような中で就業中に○○様にお声を掛けて頂き、私のプログラマとしての経験を認めて頂き、今後はこれまでの経験を活かした上で御社に貢献をしていきたいという気持ちが固まりました。

若輩者ではありますが全力で頑張らせて頂きたいと考えております。

何卒宜しくお願い致します。

 

派遣社員が引き抜きをされた際の志望動機というのは、これまでと雇用主が変わる事や引き抜きという事情が絡んでいる事から、考えるのが難しいこともあります。

派遣社員として今まで培った経験を活かしてその会社に貢献をしていきたいという前向きな志望動機を考えておきたいですね。

 

引き抜きと紹介予定派遣どちらが良い?

上記でも挙げたように、企業側が引き抜きをしたいのは紹介料等を支払いたくないからといった理由が多いかと思います。

ですがスタッフさんの立場からしてみれば、引き抜き後の雇用形態がどのような形になるかは分かりませんし、下手をすると派遣社員時代の年収条件よりも下がってしまう可能性もあります。

また無理な引き抜きが行われた場合には、企業と派遣会社間でトラブルが発生しないとも限りません。

 

そのためもしスタッフさんが将来的なキャリアアップを図りたいのであれば、「紹介予定派遣」を選択しておく事をお勧めします。

紹介予定派遣であれば会社の雰囲気等を確かめてから直接雇用について決める事ができますし、企業としても本人の働きぶりやスキルを見て雇用を判断することが出来ます。

またネックとなる紹介料についても直接雇用が成立しなければ企業側には紹介料はかかりませんので、派遣料金等の必要最低限のコストに抑えることもできます。

 

紹介予定派遣は未経験から挑戦できる職種もあり、一般入社では中々採用されないような大手企業の求人にチャレンジできる事も求職者側のメリットです。

将来的に正社員職などにステップアップをしていきたい方は、紹介予定派遣もぜひ検討しておきたいですね。

関連記事:紹介予定派遣に強いおすすめの派遣会社は?年齢やデメリットも解説

 

派遣社員の直接雇用の引き抜き?まとめ

派遣社員が引き抜きされ直接雇用になるケースについて幾つか挙げてみました。

引き抜き行為というのはルールに違反すると、相手会社側からクレームが入ったり、大きな苦情に発展する場合があります。

そのため派遣社員を直接雇用する場合でも、契約を遵守しルールに則った方法での雇用を検討する必要があります。

派遣社員は有期契約である事が一般的であり、期間満了まではやむを得ない理由がないと契約を解除できません。

そのため直接雇用する場合であっても、派遣契約を満了してから雇用契約を締結する(引き抜く)という形が通常です。

人材の引き渡し・引き抜きというのは大きなトラブルに発展する事もありますので、事前の契約内容をしっかりと把握した上で検討するようにしましょう。

今回は派遣先からの直接雇用の誘いと引き抜きについて挙げてみました。

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