派遣の禁止業務って?その罰則と実例
今回は派遣の禁止業務について挙げてみたいと思います。
基本的には派遣スタッフにどのような仕事を任せるかは派遣会社や派遣先が決める事であり、派遣スタッフに法令で禁止されている業務を任せるような事はできません。
ですがスタッフとしても派遣ができない業務をあらかじめ把握しておく事で、思わぬトラブルに巻き込まれる事を防止する事にも繋がります。
派遣法では、派遣の対象とはならない禁止業務(適用除外業務)が指定されています(派遣法第4条第1項、派遣法施行令第2条)。
これらはネガティブリスト(適用除外業務のリスト)と呼ばれていますが、このリストに挙げられている業務で派遣を活用した時には、その派遣会社や派遣先に対して、派遣停止命令や許可の取り消し・刑事罰が課せられる可能性があります。
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派遣の禁止業務とは?
派遣の対象とならない業務(ネガティブリスト)については以下のような業務が挙げられています。
港湾運送業務とは港湾で行われる業務のことを指しています。
港に着く船での荷物の運搬、荷物の積み下ろしや運送や荷造り、いかだ等による運送に関わる業務などが挙げられます。
対象となるのは、6大港(東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、関門)及びその他指定された港湾です。
禁止の理由 | 事故のリスクがある事や、港湾運送業務には「港湾労働法」という他の法律にて雇用制度がすでに設けられている事から、労働者派遣による労働力の供給が妥当ではない可能性があることが理由として考えられます。 |
禁止業務の例 | 船内荷役、はしけ運送、沿岸荷役、いかだ運送、港湾地域内倉庫でのピッキング作業 など |
建設現場では、事務所内のみで作業する事務員やCADオペレーターなどの直接作業ではない業務を除き、施行管理業務直接作業に携わる業務は、基本的にすべて禁止されています。ですが禁止業務の中でも実際には建設現場への派遣が横行している事実があります。建設現場へ派遣するような行為は行ってはいけません。
禁止の理由 | 建設労働者の雇用の安定を図るため、労働者派遣事業とは別に、建設労働者の雇用の改善等に関する法律において、建設労働者の実情を踏まえた特別な労働力需給調整制度として建設業務労働者就業機会確保事業制度が設けられているため。 |
禁止業務の例 | ビル・家屋などの建築現場での資材運搬、組立作業、建設現場内での建設作業やその準備、林業における造林作業や作業場、土場の整備、共施設(道路や橋など)の建築に関わる業務、コンクリートの合成 など |
警備業務とは事務所や住宅、店舗や施設などで盗難や放火などの事故を防ぐ目的で警戒、防止する業務を指しています。
警備業務は命に関わることもあり、派遣会社の目が届かないところで労働者の安全が確保されていないことが禁止理由になっています。
警備業務も「警備法」において、「警備業務の適正な遂行を確保するために, 警備業者が警備員を直接雇用して業務上及び身分上の指導監督を行い, 自らの責任において業務を処理すること」が既に求められており、労働者派遣を導入する事はこの規制を阻害する可能性があると考えられます。
禁止の理由 | 請負形態により業務を処理することが警備業法上求められており、労働者派遣を認めた場合、その業務の適正実施に問題が生ずるため。 |
禁止業務の例 | 会場や店舗の入口で手荷物検査・業務として犯罪者を追跡・盗難などの事故発生による防止・警戒・建物や会場内の巡回 など |
医療関連業務も禁止業務となっており、病院・診療所などに医療従事者を派遣することは禁止です。
適正な医療の提供のためには, 現場の構成員がお互いに十分な意思疎通の下に業務を遂行することが不可欠となっていますが、臨時的でありスタッフの選定も派遣会社が行う労働者派遣では、現場で十分な疎通が行われない可能性がある事や、医療行為を受ける側への安全に配慮しての意味合いもあるでしょう。
禁止の理由 | 派遣会社の判断で労働者が派遣されると、チーム内での意思疎通に支障が生じる可能性があるため。 |
禁止業務の例 | 医師、歯科医師、薬剤師の調剤、保健婦、助産婦、看護師・准看護師、栄養士等の業務 など |
医療関連業務禁止の例外
- 紹介予定派遣
- 病院・診療所等以外の施設(社会福祉施設、障がい者施設等)で行われる業務
- 産前産後休業・育児休業・介護休業中の労働者の代替業務
- 就業の場所がへき地・離島の病院等及び地域医療の確保のため都道府県が必要と認めた病院等における医師の業務
「士業」といわれる業務も禁止業務となっています。
特に弁護士や司法書士などは派遣での業務が禁止されています。
ただし税理士・弁理士・社労士などの一部は、派遣を利用した業務が可能となっています。
また派遣可能な場合であっても、当然にその士業の資格を取得している事が大前提です。
禁止業務の例 | 弁護士、外国法事務弁護士、司法書士、土地家屋調査士 など |
例外 | 公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士等の業務では一部で労働者派遣は可能 |
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禁止業務に就かせるとどうなる?
それでは派遣スタッフを禁止業務に就かせた場合にはどのような罰則があるのでしょうか。
派遣法では適用除外業務について労働者派遣事業を行った者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられる場合があるとしています。
また許可の取消し、事業停止命令、改善命令等の対象にもなりますので注意が必要です。(派遣法第59条第1号、第14条、49条)
派遣会社が禁止業務に就かせた例
実際に過去にも派遣スタッフを禁止業務に就かせた事例があります。
労働者派遣が禁じられている建設業務に作業員を派遣するなどしたとして、警視庁組織犯罪対策4課は30日、労働者派遣法違反(禁止派遣業務)などの疑いで、人材派遣会社元社長、八木原明男容疑者(26)=千葉県松戸市古ケ崎=ら男2人を逮捕した。(中略)
逮捕容疑は、平成24年6月~25年10月、東京都足立区や千葉県柏市の建設業者に労働者を派遣し、禁止されている建築現場の足場組み立てなどをしたとしている。
禁止業務へ異動させることはできる?
それでは今現場にいる派遣スタッフを禁止業務に異動させる場合はどうでしょうか。
例えば元々は事務員として採用したものの、作業現場が忙しくなった事を理由に建設業務をやらせたり、人手不足により一時的に警備業務をやらせたりといったケースです。
当然ですが、そのような場合でも派遣スタッフを禁止業務に就かせることは出来ません。
これが体に負担の少ないような軽微な作業であっても同様であり、どのような理由であれ元々の派遣契約にない禁止業務を派遣スタッフにさせることは出来ないという事です。
しかしこのような禁止業務があるとは言え、過去には大手派遣会社が禁止業務とされている港湾業や建設業への業務にスタッフを派遣していたとして、同社の全事業所に対し、2ー4カ月の事業停止命令が出されたケースもありました。
また禁止業務に就かせたとして逮捕者が出た事例もあったと聞きます。
禁止業務のように上記のような規制があるにも関わらず、実際の現場ではグレーな業務にスタッフを派遣したり、禁止業務とそうでない業務の線引きが曖昧になっているケースがある等、問題はまだまだ残されています。
派遣の禁止業務まとめ
派遣に禁止業務があるのは、その仕事を派遣社員が行うことに妥当性がない事や、労働者派遣という性質が業務に馴染まない・問題が生じる可能性がある場合などが考えられます。
また派遣スタッフとしても決して派遣先任せにせず、自分が禁止業務に携わっている事がないかどうか、常に状況を注視して業務を行うことが大切と言えるでしょう。
また少しでも不安な業務に就かされていると感じるようであれば、まずは派遣会社に相談をしてみる事も大事ですね。
今回は派遣で禁止されている業務について挙げてみました。
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