派遣先に契約解除された?休業手当や過去事例も解説

今回は派遣先都合の契約解除について挙げてみたいと思います。

せっかく派遣スタッフとして働く以上はできるだけ長い期間就業していたいものです。

しかし企業内で勤務している以上は様々なトラブルや想定外の出来事が起こり、中には契約が打ち切りとなってしまう事もあり得ます。

特に正社員等の正規雇用と比較すると、解除やリストラの憂き目に合いやすいのはやはり派遣スタッフです。

派遣先によっては、いざという時には派遣スタッフを切り捨てる・もしくは期間満了で終了させるといった対応をしてくる可能性がある事も十分に考慮しておく必要があります。

派遣先の都合だけで契約解除されるという事を簡単に受け入れない為にも、その時の対処について事前に学んでおく必要があります。

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派遣先からスタッフに契約解除はできない

まず整理しておきたいのが、派遣会社・派遣先・派遣スタッフの三者の関係性です。

派遣スタッフは派遣先に労務を提供しているだけであり、当然に派遣先とスタッフの間には雇用関係はありません。

派遣スタッフは派遣会社と雇用契約を締結し、派遣会社と派遣先会社は労働者派遣契約を締結しています。

つまり派遣スタッフと派遣先会社には労働契約自体が無いので「契約解除する」「解雇する」という事はできません。

もし派遣スタッフを解雇するというケースがあるとすれば、それは派遣先ではなく雇用主である派遣会社が行う処置です。

 

また何らかの理由で派遣先と派遣会社の労働者派遣契約が解除された場合でも、派遣会社と派遣スタッフの労働契約は続いています。

派遣先と派遣会社の間の契約が解除され、スタッフが派遣先での仕事を最悪できなくなったとしても、それを理由に派遣会社はスタッフを簡単に解雇できる訳でもありません。

そのような場合でも派遣会社・派遣先は派遣スタッフの雇用を安定させるために新たな就業機会の確保したり、休業手当等の支払いをする等の措置を講じることが求められます。

このケースの場合の措置については、就業開始時等に配布される就業条件明示書の「派遣契約解除の場合の(雇用安定)措置」の項目に記載されていますので、確認をしてみましょう。

恐らく以下のような記載がされてある筈です。

 

就業条件明示書 「派遣契約解除の場合の措置」

派遣労働者の責に帰すべき事由によらない労働者派遣契約の解除が行われた場合には、派遣先と連携して他の派遣先をあっせんする等により新たな就業機会の確保を図ることとする。

また、これができないときはまず休業を行い雇用の維持を図るようにするとともに、休業手当の支払い等、労働基準法等に基づく責任を果たすこととする。(以下略)

 

派遣先の都合で契約解除する場合の措置

それでは派遣先が派遣会社との派遣契約を解除をする場合、派遣先や派遣会社はスタッフに対してそれぞれどのような措置が必要になるのでしょうか。

派遣先の都合で契約を解除する場合、もちろんその契約解除が簡単に認められるものではなく、派遣元・派遣先がそれぞれ講じなければならない措置が定められています。

主には労働者派遣法の派遣指針の中で以下のような事が定められています。

 

派遣会社が講じる措置(派遣元指針第2の2)

  • ①契約の中途解除を行った派遣先と連携して、派遣先の関連会社を就業先として紹介してもらうなどにより、派遣労働者の新たな就業の確保を図ること。
  • ②中途解除に伴って派遣労働者を解雇しようとする場合には、労働基準法等に基づき雇用者責任を果たすこと。

 

派遣先が講じる措置(派遣先指針第2の6)

  • ①派遣スタッフに対して派遣先の関連会社での就業をあっせんする等、就業機会の確保に努めること
  • ②派遣先の都合で中途解除する場合には、派遣元に対して相当の猶予期間をもって契約解除の申し入れを行い、了承を得ること。
  • ③ ①が出来ない時には派遣元に対して中途解除しようとする日の少なくとも30日前までにその旨を予告するか、予告を行わない場合は派遣労働者の30日分以上の賃金相当額を損害賠償として支払わなければならないこと。
  • ④派遣会社から派遣労働者を契約期間満了前に解除した理由を求められた場合には、これを明らかにすること。

以上のように派遣会社・派遣先はそれぞれの措置をし、派遣スタッフの雇用安定を図るために出来るだけの努力をしなければならない事になっています。

 

派遣先が契約解除を通知するのはいつ?何日前?

もし派遣先がやむ負えない事情により派遣会社との労働者派遣契約を解除する場合には、派遣先は派遣スタッフに直接伝えるのではなく、派遣会社に対し速やかにその旨を通知する必要があります。

よく実際の現場では派遣先の社員がスタッフに対し「明日から来なくて良い」等といった指示を出すケースがありますが、そもそも派遣先と雇用関係のないスタッフに対しこのような指示を出す事は明らかな誤りです。

また契約解除をする場合には先ほどに挙げた派遣先指針を見ても、派遣先は派遣会社に対して少なくとも30日前までにその旨を告げる必要があるように思います。

併せて派遣会社から請求があれば、派遣先は途中で契約解除する理由を派遣会社に対して明らかにすることとされています。

 

派遣先が契約解除をする理由は?

前述したように、派遣先は派遣会社との派遣契約を簡単に解除する事はできません。

契約を解除する場合にはそれなりのやむ負えない理由が必要です。

それでは派遣先が契約解除できるような理由としてはどのような事が挙げられるでしょうか。

  • 派遣先の経営状況が倒産に近い状況である
  • 派遣されているスタッフが懲戒解雇に値する事故を起こした
  • その他派遣スタッフが信頼関係を損ねる行為を行った等

逆に言えば、例えばスタッフとの相性が合わない・スタッフの成績が悪い・スタッフのスキルが足りていない等といった事情では、契約解除の要件を満たしていない可能性があります。

 

派遣会社は賃金・休業手当の支払いが必要

先ほども上記で挙げたように、もしやむ負えない事情で派遣会社と派遣先の派遣契約が解除される場合には、派遣会社と派遣先はそれぞれ必要な措置を講じなければなりません。

そして具体的には派遣会社が派遣スタッフに対し新たな就業機会を確保できない時には、派遣会社は賃金・休業手当の支払いが必要になります。

派遣会社と派遣先の派遣契約は解除されても、派遣スタッフと派遣会社の雇用契約は継続していますので、派遣会社はその賃金を支払わなくてはならないという事です。

またもしやむ負えずスタッフを休業させる場合でも、派遣会社は平均賃金の6割以上の休業手当を支払う必要があります。

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派遣社員の休業手当の計算方法

上記のように派遣会社と派遣先の契約が解除された場合、派遣会社はスタッフに対し賃金や休業手当の支払いが必要になる場合があります。

特に休業手当については計算方法が分かりにくい部分もあるでしょう。

休業手当については「平均賃金の6割」を支払うことが定められています。

休業手当の金額 = 平均賃金 × 休業日数 × 0.6

 

ですが派遣社員の場合は時給制なので、

過去3ヶ月間の賃金総額÷期間中の労働した日数×0.6

で計算した金額の方が多くなる場合には、こちらの金額を平均賃金とすることになっています。

 

休業手当の計算例

 

時給:1000円


勤務日数

1月:20日

2月:19日

3月:21日


給与

1月:16万円

2月:15万円

3月:17万円


計算:(16万+15万+17万)÷60日=8000円(平均賃金)

8000円×0.6=4800円

例えば休業日数が10日間であれば×10=48000円程度の休業手当になります。

 

なお休業補償と異なり、休業手当は会社からの賃金として扱われるので社会保険料や税金の対象となります。

休業手当:労働基準法第26条に定められており課税対象)

休業補償:労働基準法第76条に定められており課税対象外)

 

派遣社員を解雇しなければならない場合

派遣先と派遣会社の派遣契約が解除されたとしても、それを理由に派遣会社はスタッフを簡単に解雇できる訳ではありません。

派遣会社とスタッフの間で期間を定めて労働契約が結ばれている以上、やむ負えない事情がない限り契約期間の途中でスタッフを解雇する事はできない事になっています。

特に派遣社員のような有期契約(3か月など期間の定めのある契約)の労働者を解雇する場合には、期間の定めのない契約よりも、より厳しく解雇の有効性が判断される事になります。

 

またもし派遣会社がやむ負えない事情により、スタッフをどうしても解雇しなければならない場合には、少なくとも解雇日の30日前に解雇の予告を行うか、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払わなければならない事になっています。(労働基準法第20条)。

また雇用期間が2か月以内の派遣スタッフは解雇予告の対象にはなりませんが、もしその時の契約期間が2か月以内であっても、契約を更新し2か月を超えて雇用されている場合には解雇予告の対象となります。

以上が原則ではありますが、本来客観的に見て明らかに合理的な理由がなければ派遣スタッフを解雇する事はできません。

もし解雇を告げられた時にはその解雇理由を書面にて請求し、その理由に納得ができない場合には公的機関等に相談する等して対応をしていく方法もあります。

 

派遣先から契約解除された過去事例

ここでは実際に派遣契約が途中で解除された場合のあっせんの例を挙げてみます。

登録型派遣社員としてY会社に採用された労働者Xは、Z会社に派遣され、物流施設の設備管理業務に従事した。

館内禁煙を定めた施設であるのにZ社員が施設内で喫煙をしているのを見かけたXは、Z社員に喫煙を止めるように依頼したが改善されなかった。

そこでZ会社の施設長Aに喫煙ルールを確認したいとXが申し出たところ、Z社員から「帰れ。」と言われた。

Xは、Z会社からの連絡を受けたY会社の指示で早退し、以降は自宅待機の指示を受けた。

1 週間後、XはY会社からZ会社との派遣契約が中途解約になったと伝えられた。

Y会社からは、派遣先を変更するか、新たな派遣先が無い場合は、雇用契約満了日をもって雇止めと告げられた。(以下略)

※厚生労働省 調整事件解説集より引用

この例では、派遣スタッフXが派遣先Zの喫煙ルールを確認した時に、Zの社員から「帰れ」と言われ、その連絡を受けたY派遣会社から自宅待機を命じられ、その1週間後にZ派遣先とY派遣会社との派遣契約が解除された事例です。

結果としては、自宅待機中の休業手当の支払いと賃金 2 か月分の解決金にて双方がこれを承諾し解決しているようです。

このケースのように派遣先の一方的な判断により派遣契約が突然解除されてしまう場合というのも珍しい例ではなく、派遣スタッフも突然職を失ってしまう可能性もあります。

自分がこのような状況に立たされた時にどのように対処をするべきか、派遣社員として就業をする上では対処の仕方も考えておく必要があります。

 

派遣スタッフが契約期間内に仕事を辞めたい場合は?

それでは上記のような会社側の契約解除とは関係なく、派遣スタッフが契約期間内に自分の都合で仕事を辞めたいと思った場合はどうでしょうか。

実際に派遣スタッフさんの中には、契約期間内に辞めてしまったり、突然に無断退職をしてしまうといった人も少なくはありません。

結論から言えば派遣スタッフも派遣会社との間で雇用契約を結んでおり、その契約期間をきちんと守る必要があります。

つまり仕事がイヤになったからと言って、契約期間中に退職をする事は原則として出来ません。

 

ただし大きなケガをしたり長期間の入院が必要になってしまった場合など、「やむを得ない事情」が生じた場合はこの限りではありません。

例えばスタッフ側のやむ負えない事情としては、家族の転勤が決まってしまった・大きなケガや病気をして長期間の療養・入院が必要・両親の介護が必要になった場合などが考えられます。

逆に言えば「仕事が面白くない」「もっと休みが欲しい」「朝起きられない」といった安易な理由では、契約期間中に辞めることは出来ない事になります。

 

もしやむ負えない事情が発生した場合には、その時点ですぐに派遣会社に連絡をするようにしましょう。

多くの場合では、そのような事情であれば派遣会社も柔軟に対応をしてくれるケースが多いと思います。

一番やってはいけない事は無断退職をしたり急に姿を消すことです。

きちんと連絡をして派遣スタッフとしての責任を果たすようにしたいですね。

 

派遣先からの契約解除まとめ

契約解除という最悪のケースは出来れば考えたくないものですが、派遣スタッフとして働いている以上はこのような不測の事態の事も考慮しておかなければなりません。

また実際にこのような解雇や契約解除が発生する事例では、企業側に有利に働くように話をごまかされてしまうようなケースも少なからずあります。

確かに派遣会社も相談先として頼りになる存在ではありますが、時には派遣先寄りに肩を持たなければならないケースもあるかもしれません。

突然の契約解除を言い渡されたとしても、その時に対応策を知っているのと知らないのとでは雲泥の差が生じる事があります。

派遣スタッフさん自身も、普段からトラブルは自分で払いのけるくらいの意識が持っておいた方が良いのかもしれませんね。

 

派遣会社の選び方

派遣社員を長く続けていると時には上記のような派遣先都合での契約解除など、自分が納得できないケースも出てくるかもしれません。

これはどの派遣会社に在籍をしていても起こり得る事です。

それでもこのような最悪の事態を出来るだけ避けるには、「大手」の派遣会社に登録をする事をお勧めします。

大手の派遣会社ではスタッフへのフォロー体制もしっかりしており大手や優良派遣先も多い事から、安定した職場を探しやすいという事が言えます。

当サイトでもお勧めの派遣会社を幾つかご紹介していますのでご覧になってみてください。

参考記事:おすすめの派遣会社はこちら

今回は派遣先に契約解除されたケースについて挙げてみました。

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