派遣の事前面接は禁止されている?事前面接の解禁は?

今回は派遣の事前面接について挙げてみたいと思います。

派遣の事前面接というのは派遣会社から仕事を紹介された時に、事前に派遣先へ面接をしに行く事を指します。

皆さんの中にも派遣社員として勤務開始する前に、派遣先へ面接に行くように派遣会社から言われた事がある人も多いのではないでしょうか。

派遣会社からは「派遣先との顔合わせ」とか「派遣先の環境を知っておく為の職場見学」という名目で面接を促される事も多いかと思いますが、この事前面接は本当に問題ないのでしょうか。

スポンサーリンク

事前面接は派遣法違反

ご存じの方も多いかと思いますが事前面接が行われる事は派遣法違反という事になります。

なぜ事前面接が禁止されているかと言えば、本来は派遣会社が自社の登録者の中から選んで派遣するというのが派遣の制度であり、派遣先企業が派遣労働者を特定する(選ぶ)ことは禁止されているからです。

 

労働者派遣法でも事前に派遣先が労働者を特定するような行為をする事を禁止しています。

派遣法の26条7項

「労働者派遣(紹介予定派遣を除く)の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、

当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように

努めなければならない。」

この法に従えば事前に派遣先が面接をする事は人選行為として違反という事になりますし、履歴書を送らせたり性別による選別を行ったり年齢による制限を課す事も禁止という事になります。

もちろんこの法は派遣先に限った事ではなく雇用主である派遣会社にも適用され、派遣先が労働者を特定するような行為に派遣会社が協力する事も許されるものではありません。

例えば派遣先が若いスタッフが欲しいという要望があった場合に、それに応じた人選をしたり、履歴書を送ってほしいという要望に対してスタッフの履歴書のコピーを無断で送る等、派遣会社としてもこのような労働者を特定しようとする行為に協力しないように法を遵守する姿勢が求められています。

 

実際には守られていないのが現状

しかし一方で実際の現場ではこの事前面接はほぼ当たり前のように行われているのが現状です。

前述したように派遣先との打ち合わせと称し面接を行ったり職場見学の名目で面接をする・派遣先が複数の派遣会社にオーダーを依頼し複数の派遣スタッフと事前面接を行い、その中からスタッフを選別をする・事前に面接だけではなく試験を行いその点数で合否を決める等、様々な形で事前面接と解される行為が行われています。

派遣社員としても事前面接は禁止と知っていながら、実際には派遣先の面接をパスしなければ仕事を紹介してもらう事ができないという事情もあり、はがゆい立場でもあります。

 

事前打ち合わせが許される場合

しかし事前に派遣先と会う事が全て禁止されている訳ではありません。

まず紹介予定派遣では特定行為が許可されています。

そのため紹介予定であれば事前の打ち合わせも許可されますし、履歴書を事前に送ったりといった行為も問題ありません。

派遣法でも紹介予定派遣においてはスタッフの特定行為が許可されています。

 

しかし何もかもがOKという訳ではなく、例えば差別的な扱いをする事は紹介予定でも禁止されています。

性別や容姿・年齢といったもので採用の可否を決める等、差別的な扱いは紹介予定派遣でも許されません。

しかし実際には「年齢35歳まで」「女性限定」など、あらゆる現場で差別とも見られるケースを目にする事があります。

 

またその他にも事前の打ち合わせが許されるケースがあるとすれば、雇用契約が成立した後の仕事の打ち合わせの場合です。

既にその派遣先で仕事をする事が決定しているのであれば派遣先と会って打ち合わせをする事は何の問題もありません。

逆に言えば面接や面談に行くという事は、その時点で雇用契約が成立しているという見方もできます。

 

今では派遣の仕事を開始する前には当たり前のように派遣先と事前面接が行われていますが、この面接がもし「契約成立後の仕事の打ち合わせ」だったと仮定すれば、本来はこの面接をした時点で派遣先に雇用される事が決定済であるとも考えられるでしょう。

だとすれば派遣先での面接の結果、もし不採用を言い渡されたとすれば、その面接に要した時間分の日当や交通費さえも請求できるとも考えられなくはありません。

スポンサーリンク

派遣の事前面接への対処法

前述したように事前の面接や打ち合わせをしているという事は雇用関係が成立していると考えれば、事前面接の結果、不採用になった場合などは派遣スタッフは派遣会社にその面接時間分の給与と派遣先までの交通費を請求する事も考えられます。

また面接の結果、派遣先が合理的な理由もなく受け入れを拒否するのであれば、勤務した場合の経済的価値や精神的苦痛に対する損害賠償請求を検討出来るケースもあるでしょう。

 

また雇用契約が成立しているという考えの元であれば、派遣先が受け入れを拒否していても派遣会社は給与を支払う義務があると考えられ、派遣会社は派遣スタッフに賃金支払い義務が生じるとも考えられます。

事前面接は当たり前のように行われていますが、法を元にした見解からすれば明らかに違反行為であり、派遣スタッフとしても自らが事前面接を希望している場合等を除き、はっきりと事前面接等の誘いを断る姿勢も必要と思われます。

 

事前面接は罰則がない?

事前面接が無くならない理由としては幾つか考えられますが、前述した派遣法の26条7項については条文の末尾を見るとわかるように「努めなければならない」という締めくくりになっています。

つまりは派遣先に努力義務を課す事に終わっており、例えこの条文に違反している事が明らかでも、罰則規定が設けられている事ではない点に注意する必要があります。

罰則規定がない以上は派遣先を始め派遣会社としても労働者の特定行為に協力してしまう可能性もあり、今後もこの風潮が完全に無くなる事は考えにくく、現在でも法改正を求める声があるようです。

 

しかし努力義務とは言え、このような法がある以上は派遣先がスタッフを選別する事は出来ず、人材を決定するのはあくまで派遣会社です。

また派遣スタッフとしてもこのような違反行為に出来る限り協力せず、トラブル時には労働局や労基署など専門機関への相談も検討する事もできます。

差別的な要素も含む難しい問題ではありますが私達が小さい事からでも声をあげていく事によってルールを動かす事が出来るよう、普段から行動していきたいものですね。

 

以前には事前面接「解禁」の動きも

このように派遣法では事前面接が禁止となっていますが、過去にはこの事前面接を解禁しようという動きもありました。

厚生労働省は派遣社員の雇用ルールである労働者派遣法を大幅に改正する方向で検討に入る。

派遣会社から人材を受け入れる際に企業が候補者を選別する事前面接を解禁する。

企業にとっては候補者の能力や人柄を見極めたうえで受け入れの是非を決められるようになる。(以下省略)

※日本経済新聞より引用

この記事は平成19年とかなり以前の記事であり、結果的にはこの事前面接の解禁は見送られることになりました

ですが現在も実質的な事前面接は行われています。

ではもし今後に事前面接が解禁される事があった場合、どのような影響が考えられるでしょうか。

 

解禁のメリット?
  • 派遣会社・派遣先・派遣スタッフのお互いが納得して契約ができる
  • スタッフ自身の事を派遣先によく知ってもらってから就業できる
  • 派遣先が直接面接を行うことで、人材のミスマッチを抑えられる可能性
  • 中途半端な事前面接が行われているくらいなら、解禁にしてしまった方が良いという声

 

解禁のデメリット?
  • 容姿や体格・性別などが選考の判断基準になる可能性
  • 解禁のメリットは主に派遣先にだけ生じ、派遣会社やスタッフにはほぼメリットなし
  • 採用までの選考スピードが落ちる可能性
  • 派遣先主導で面接が行われる事で、派遣先都合での人事(採用取り消し等)が起こりやすくなる可能性
  • 派遣会社の存在意義
  • 派遣先での面接の場合、そこまでの交通費は支給されるのかどうか等

 

派遣の事前面接・解禁のまとめ

派遣での事前面接が今後もし解禁されるような事があっても、スタッフさんにとって大きなメリットが生じるのかどうかは不透明ですし、あえて派遣という形態を選択する意味も薄れてくる可能性もあります。

今後も派遣法は随時改正されていく事が予想されますので、よく内容を注視していきたいですね。

また実際の派遣先との顔合わせで質問される具体的な内容についてはこちらの記事でまとめてありますので参考にしてみてください。

※ 派遣の顔合わせで質問される30の項目

今回は派遣の事前面接と解禁について挙げてみました。

スポンサーリンク