派遣先でセクハラにあった時の対応は?
今回は派遣先でのセクハラについて挙げてみようと思います。
セクハラとはご存じの方も多い通りセクシャルハラスメントの略です。
数年前から定着してしまったこの言葉ですが主に女性が男性に対して使うケースが多いように思います。
それだけに女性が男性にセクハラをされたと感じる場面が多い事や、派遣社員と派遣先社員との格差の違いが職場で出やすいとも考えられます。
このように派遣社員がセクハラに自分が遭遇してしまった場合にはどのように対処すれば良いでしょうか。
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目次
派遣でセクハラとなるのはどのようなケース?
では具体的にはどのようなケースがセクハラとなり得るでしょうか。
ケースによっては自分が明らかにセクハラと感じていても、相手(男性)はそのつもりはないと言い張るケースさえも考えられます。
例を挙げると、以下のようなケースが派遣先のセクハラとして考えられます。
- スリーサイズなど性的な質問をする
- 交際を迫ったり飲食の場を強引に設けようとする等の行為
- 性的関係の強要
- 体に不必要に触れたり抱きつく等の行為
- お酒の晩酌の強要など
- セクハラ行為を拒否した事を理由に不利な処分を下す
- 性的な内容の会話
- 更衣室の覗き
- 上下関係を盾にした性的行為の強要など
上記の他にもまだまだセクハラと考えられるケースは幾つもありますが、セクハラ問題で肝心な事は「例え本人がそのつもりがなくとも被害者である本人がセクハラと感じたのであればセクハラとして成立する可能性がある」という事は言えます。
また派遣先の社員と派遣スタッフというのは職場は同じでありながらどこか格差のようなものが存在する事が多く、派遣先の社員としても派遣スタッフの存在を自分より格下のように甘く見てセクハラ行為に及んでしまったというケースもあったと聞きます。
また当然の事ながら雇用主である派遣会社としてもこのような行為には指導しなければならない立場でありながら、今後の派遣先との取引関係の維持を考えると簡単には派遣先会社に意見しにくい場合もあります。
派遣会社にとって派遣先はただの取引相手ではなく「お客様」であるため、時には派遣会社が弱腰になって派遣先に対して積極的な指導を出来ないシーンも予想できます。
しかしながらセクハラは決して許されない行為であり、ケースによっては派遣先のその上司の配置換えを要請したり派遣契約そのものを一斉解除する等の措置を取っていく姿勢も求められます。
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セクハラには対価型と環境型がある
少し堅い話になりますが、セクハラについて定めているのは男女雇用機会均等法になります。
この法律によってセクハラは対価型と環境型に分けられるとされています。
職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により、その労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けることを指します。
例:セクハラ行為を拒否した事により減給されたり部署の配置換えを言い渡される等。
職場において行われる性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなり、その労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指します。
例:上司のセクハラ行為により労働者が苦痛に感じ仕事意欲が低下する等。
損害賠償請求の対象となる事も
労働派遣法47条においても男女雇用機会均等法について触れており、またこの法を守るべきは雇用主である派遣会社だけではなく派遣先にも遵守させる意図が盛り込まれています。
また同法の3章ではセクハラに対しての事業主の方針等にも触れられているほか、セクハラ問題への相談・苦情に対して適切な対応をすべき事を記しています。
この事から派遣会社だけではなく派遣先も、セクハラを事前に防止する義務がある事が理解できます。
またセクハラ問題は民法上の不法行為責任を負う可能性もあります。
いくら派遣会社が雇用主とは言え、派遣先の社員が起こしたセクハラ事故である以上は、派遣先会社としても使用者としての責任を免れないケースも考えられるでしょう。
また派遣会社としてもこのようなセクハラを事前に防止する安全衛生面の配慮の義務があるとされている事から、やはり派遣先と同じく派遣会社もスタッフから損害賠償責任を追及される可能性があります。
セクハラに逢った時に覚えておく事
- 男女雇用機会均等法では、セクハラを防止するために、雇用管理上必要な措置を講じることを、事業主に義務付けている。
- 労働者派遣法では、派遣元のみでなく派遣先企業にもセクハラ防止に関する措置を義務づけている。
セクハラ問題は今や個人だけの問題でなく、社会問題となっています。
そのため雇用主である派遣会社だけでなく派遣先企業としても、このようなセクハラ問題が起こらないように未然に連携をして対応をしていく事が求められています。
また派遣社員というのはその形態上、時には職場で不利な立場に立たされてしまうケースもあります。
そのような状況下でも相手方に対してセクハラを拒絶する意思をはっきりと伝えられるような強さも必要です。
セクハラの記録を取っておく
セクハラの被害者となるのは主には女性である事が多く、また普段派遣先へ派遣され仕事をしているという立場上、なかなかセクハラに対して強気な処置に出られないというケースも多いかと思います。
また派遣先にセクハラ相談室のような部門があったとしても、必ずしも派遣スタッフに対して協力的に機能しているとは限りません。
またスタッフさんによってもセクハラに希望する対応は異なり、セクハラに対して自分で断固強気な姿勢で解決していきたいという人もいれば、大きな問題にせず穏便に解決したいと考える人もいるでしょう。
ですがどの解決方法を取るにしても、セクハラがどのように行われたのかという状況証拠や記録を取っておく事は有効です。
会社ではスマホ持ち込み禁止などのオフィスが多い事から動画撮影や録音媒体を持ち込む事は難しいかと思いますが、メモ書き程度でも良いのでいつどのようなセクハラ行為を誰から受けたのかという記録を取っておく事は後々に効果を発揮する可能性があります。
心苦しいかもしれませんが、後々になっても思い出せるように、どの様な状況でどのようなセクハラ行為が行われたのかを具体的に記録をしておく事が大切です。
例えば〇月〇日に~の場所で○○のようなセクハラ・言動を受けた、○○に対してセクハラをしないで欲しいと明確に拒絶の意思を伝えたが、相手は○○と言ってセクハラをやめようとしない、など、その時の状況を客観的にみてわかるように記録を取っていきましょう。
派遣会社に相談する
セクハラを受けたらまずは派遣会社に相談する事が大切であり、派遣会社の担当者に対して自分がセクハラに逢っている事実を相談しましょう。
自社のスタッフが知らないところで不利益を被っているのであれば、派遣会社であれば派遣先に対して厳しく是正してくれる筈です。
派遣会社がセクハラについて理解が浅いようであれば、派遣会社として事故を防止する義務がある事を自らで説明していく姿勢も時には求められます。
もし派遣会社にいっても状況が改善されないようであれば、セクハラ問題を理由にスタッフ側から派遣契約を解除することも可能です。
セクハラ問題が理由であれば派遣会社は速やかに次の職を探す等して努める必要があります。
また派遣会社だけでなく派遣先にも苦情対応が義務づけられており、派遣先にも派遣先責任者が設置されている筈ですので、セクハラを受けているスタッフさんは両方の責任者に苦情を申し出ることができます。
労働局・労働基準監督署への相談
派遣会社が派遣先と話し合いの場を持つようであればその結果をしばらく冷静に見守る事も大切ですが、もし派遣会社が派遣先に対して弱気な姿勢であれば労働基準監督所や労働局へ相談を持ち込む事も考えられます。
その場合には自分で残した記録等を元に、具体的に派遣先や派遣会社へ指導をしてもらうように根気強く求めていく事になります。
セクハラについても各種窓口がありますので親身になって相談にも応じてくれる筈ですし、具体的な対応策を提示してくれる場合もあります。
しかし労基署でさえ確実な証拠等がなければ積極的に動けないケースもあり、問題が根本的に解決する手立てが全く無い場合には、最終的には裁判をも視野に入れていく事になります。
やはりここでもセクハラの過程を記録した証拠が必要とされる事が多く、裁判上でも有効に働く可能性があります。
しかし裁判となれば金銭的な負担は元より時間的なコスト・精神的な負担なども考慮すれば必ずしも訴訟による解決策がベストとは限りません。
その場合には派遣先・派遣会社等へ和解金を提示した上でその金額や相手の謝罪対応に納得がいくものであればそれに応じるのも一考かと思います。
解決方法は人それぞれですが、やはり自分が納得のいく解決の着地点を模索して取り組んでいくより他ありません。
セクハラは許されない問題であり今後も同様の事例が増えていく事が予想されますが、派遣先を含め個人個人がその問題意識を高めていく事がトラブルの減少に繋がっていくかと思います。
今回は派遣先でのセクハラ問題について挙げてみました。
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